『サヴァイヴの未来の為に・決戦編・12』(シャアラ&ベル&ルナ)    帰還後の創作 

 


 

 

・・・・・・・ベルは、優しい。

 

でも、そんな優しさは、11年前から知っているし、この11年間もそれは変わることは、なかった。

 

私の想いを、正面から受け止めてくれていたし、自分も忙しいのに、小説の仕事に煮詰まった時も気を遣ってくれたり。

『逢いたい』と言えば、できるだけ都合つけてくれたり。

いつだって、元気付けてくれた。

大切にしてくれた。

 

あの・・・・・・包み込むような、柔らかな、春風のような、笑顔、で。

 

 

でも。

 

・・・・・・・でも、ね。

 

ベルは、「君が大切だよ。」としか、言わない。

 

求めれば、優しい唇もくれるし、その身体の温もりもくれるのに。

 

私が、一番欲しいものをくれない。

 

『愛してる』って。・・・・・・・・・・言ってくれない。

 

 

ハワードはいつも、そんな言葉は無意味だって、言う。

そうやって、どこにでもありふれてる一言なんて、口にするだけなら簡単なんだ、要は、気持ちだろう?

見てみろよ、カオルとルナだって、あんなに2人の世界に浸ってるけど、そんな言葉言い合ってるの、聞いたことない、ぜ?

 

確かに、そう、ね・・・・・・・・。

 

そうだけど。

 

 

だけど・・・・・・わかるの。

 

そんな2人の関係と、私達の関係は、違う。

 

どこが違う、と聞かれれば、上手く答えられないけれど。

 

けど。

 

 

ベルが時々見せる、あの表情。

あの少し、辛そうな、少し、悲しそうな、それを必死で耐えているような、そんな瞳を見る、と。

・・・・・・思うの。

 

人って、本当に心から、全身全霊で愛せるのは、たった一人なんじゃないかしら。

 

その後の人生で、例え、共に歩んでもいい、と思えるような人と出会っても。

 

一生、心に繋ぎとめていられるような人と出会えるのは。

 

もしかして。・・・・・・・・・・・・たった一度、なのかもしれない。

 

 

ベル。

 

あなたにとって、その人は、ルナ、ね?

 

あなたは、「ルナには11年前にフラれてるよ」って笑って言うけれど。

 

あなたの中で、ルナは、『たった一人』に、もうなってしまっていたから。

 

その想いは、もう、きっと。・・・・・・・・・・・一生、消えない。

 

 

 

だからこそ、何度でも、言う、わ。

 

私は、いつまでも、あなたを待っている。

 

あなたが一生、ルナを見ていてもいい、の。

 

だって、私にとっての『たった一人』は、ベルだから。

 

私の、一生の想い、だから。

 

 

だから。・・・・・・・・・・・・・何度、でも。

私が口にする、この言葉は無意味じゃない。

 

 

『私は、ベルを愛しています。』

 

 

_________________________________

 

シャアラとベルが担当になった南の森は、一日中、柔らかな日差しが降り注ぐ、花や果実も豊富な区域だ。

今、ハワード達がいるはずの西の海岸付近や、ルナ達のいる東の森とも、少し、雰囲気が違う。

亜熱帯のジャングルの一部分とは思えない、どこかのおとぎ話に出てきそうなこの南の森が、シャアラは大好きだった。

 

「11年前より、お花が増えてると思わない?」

 

前を歩くベルに後ろから、声を掛ける。

ベルはそんなシャアラをニッコリ笑って振り返った。

 

「うん、そうだね。・・・・・・この島全体的に、雰囲気が良くなってるなぁ。ルナ達の結婚式で来たときは、ゆっくり見ていられなかったから、気付かなかったよね。きっと、タコ達の管理の仕方が上手いんじゃないかな。」

「きっと、そうね。・・・・・嬉しいわぁ。私達がいなくなった後も、この島は、まるで時間が止まったかのように、変わらなくて・・・・・」

 

思わず立ち止まって、空を仰ぎ、澄んだ空気を胸一杯に吸い込むように、深呼吸をした。

ベルも柔らかな表情のまま、それを見ていた。

 

「・・・・人と、人との関係も・・・・・ずっと変わることのないまま・・・・永遠に時間が止まってしまえばいいのに・・・・・」

 

あの頃のよう、に。

ただ、みんな一緒にいることが、嬉しかった頃のよう、に。

いつも、笑っていられた・・・・・・・・楽しかった、日々。

 

「え?」

 

ベルが訝しげな表情で聞き返してきた。

シャアラは慌てて、首を振って、はにかむ。

 

「あ、ううん!!・・・・・・今度も、ただ遊びに来ただけだったら、楽しかったのに。なんだか・・・・・悔しい。アダムは行方不明だし、私達は、狙われてる、っていうし、カオルは具合悪そうだし、ルナは笑わない・・・・・」

 

シャアラの言葉に、ベルは絶句したように、俯いた。

この作り笑いも・・・・・・・・・辛い。

 

「ごめん・・・・・こんなこと言って・・・・・」

「いいや。・・・・・・・・シャアラ。俺達も、出来るだけのことはやろう。今度こそ、11年前のように、全てが上手くいくとは限らないけど。でも、それが当然なんだ。だってそうだろう?・・・・・・俺達は、神、なんかじゃないんだから。」

「そうね・・・・・・」

 

いつになく、そんな言葉を硬い表情で吐いた後、ベルは再び、いつもの笑顔を浮かべた。

 

「考えてみれば、カオルじゃないけど、単に昔に戻ったと思えばいいよ。あの時だって誰も頼れる人はいなくて、俺達だけで、考えて、出来ることをやっただろう?クーデターの首謀者が誰かはわからないけど、こうやって知らせればいいんだ。・・・・・・・俺達は、この星の人間と違っているところは何もない。同じ人間なんだ。争う理由なんてないんだ。・・・・・・・俺達は。」

 

ベルは微笑んでいても、いつも、その口調は力強い。

相手を導くように、この心を引っ張っていってくれる。

 

「・・・・・・ただ、『生きよう』としてるだけ、なんだ。未来に向かって。」

 

 

・・・・・・そう。

 

だって。・・・・・私達も、幸せになりたいだけなんだもの。

 

幸せに生きていきたいだけ、なんだもの。

 

それって、この星の人たちだって、私達だって、同じ、よね?

 

みんな、望みは、同じ・・・・・・・・・!

 

 

「・・・・・・・・だから、私、ベルのこと、好き、だなぁ・・・・・・・・・」

「えぇ!??」

 

急に真っ赤になって、ベルは身をすくめる。

まるで、初めて聞いたかのように。

・・・・・というか、こんなところでそんなセリフ言われるなんて、きっと全く予想してなかったんだろうなぁ。

 

だから、何度でも言うの。

 

「そうよ!だから、私、そんなベルがとても、好きよ?」

「シャアラ・・・・・・・・あっ!!」

 

真っ赤になったまま、シャアラを抱き寄せようとしたベルが、肩越しに背後を見て、大声を上げた。

驚いて振り向こうとしたシャアラを、グイ!と自分の背後にやる。

 

「ベル!?」

「シャアラ!下がって!!」

「え!?」

 

手にした石斧を構えて、体勢を低くしたベルの影から、そっと対峙する相手を覗きこんで、シャアラはギョッとした。

 

表情の読めない真っ赤な二つの大きな目。大木の枝のような長く固そうな触角、ギラギラとした羽をしょって、2人を前に、ゆっくり威嚇するように振り上げているのは・・・・・・陽の光を照り返す程の、艶を見せる、鋭い二つの刃・・・・・・・・!!

 

「こ・・・これって・・・・・カマキリ・・・!?・・・・・だったっけ!?」

上ずった声のシャアラにベルは声を落として答える。

「カマキリもどき・・・・・かな。資料で読んだ、地球にいたらしいカマキリはこんなに大きくないよ。」

「そ・・・そうよね!?でも、ここは東の森じゃないわ!・・・・・こんなに大きいなんて・・・・!!」

 

ベルとシャアラのいる距離から、約10m。しかし、離れていても、二人の身長をゆうに越す大きさであることは間違いない。

確かに、大トカゲや大海蛇や、パグゥみたいに、ビッグサイズには慣れているはずだけど。

でも・・・・・でも、今度の相手は、まるで武器を手にしているかのような巨大昆虫!!

あんな刃を振り下ろされたら、ひとたまりもないわ!!

 

「ベル・・・・・どうするの!?」

震える声で、シャアラはベルの服を掴む。

ベルはじり、とブーツの底を鳴らして、僅かに下がる。

「・・・・・逃げようにも、もう、ヤツは俺達を見ている・・・・・!」

「で・・・・・でもぉ・・・・・!!」

 

なおも身体の震えが倍増した瞬間。

・・・・・・・シャアラの手にしていた石槍がツルリと滑って、カラン、と地面に落ちた。

 

「!?キャア!!」

「シャアラ!!」

 

小さく叫んだ瞬間。

 

巨大カマキリの、二つの真っ赤な双眸が、カッ!!と光った気がした。

 

・・・・・・来る!!

 

「逃げろ!!」

「いやぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」

 

涙ながらに叫んで、ブ〜ン!!という不気味な羽音を背に感じながら、無我夢中でデコボコの山道を走り抜ける。

恐怖で、足がもつれて上手く走れない。

そして、地面に隠れた石につまずいて身体が前のめりに飛んだのも、一瞬だった。

 

「あ!!」

「シャアラ!!」

 

目の前に土が剥き出しの地面が迫ってきた。

思わず、目をつぶる。

衝撃は・・・・・・・・・・・・ザクリ!!という奇妙な音と共にやってきた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

 

地面と接した腹部に、ベルの腕。

おかげで、転んだ衝撃は半分で済んで。

巻き上がった土埃も一瞬で舞って消えた。

それでも。

・・・・・・・・頭上には、あのブ〜ン、という鳥肌の立つ音がまだ響いていたから。

すぐには振り向けずに、シャアラは硬直する。

ベル・・・・・・・!!

 

 

意を決して、顔を傾けて・・・・・・・・目を見張った。

シャアラの間近に、赤い双眸。

それよりも。その横に長く伸びるギザギザの長い鎌のようなカマキリの片腕が。

シャアラに斜めにかぶさるように重なっていたベルの持ち上げた腕に・・・・・・!

刺さってる!!

 

「ベル!!!」

 

シャアラが絶叫した瞬間、響いていた羽音がなおも大きくなる。

2人の頭上で、羽根を広げたままその場で静止し、巨大カマキリは、その鋭い刃を、シャアラを庇って振り上げたベルの腕に突き刺したまま、ゆっくりと上下に動かした。

 

「・・・・・・・・っ!!」

 

耳元で、ベルの苦しげな息使い。

カマキリがその刃をを動かすたび、ベルの逞しい腕に深々と刺さった傷口から、真っ赤な血が流れて肩先を濡らす。

 

「・・・・・・・・動かないで・・・・・・・シャアラ・・・・・・・・!」

 

ベルがその刃を抜けば。

真っ直ぐに振り下ろされた先は・・・・シャアラの身体。

 

私・・・・・私を庇って・・・・・・・!!

 

ジリジリ、と動かした、シャアラの手の平に。

・・・・・・・・・・・ベルが落とした石斧が触れた。

 

決断は、一瞬。

 

「こぉんのぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「わぁ!!シャアラ!?」

 

バキッ!!!!

 

・・・・・・・南の森中に響いたかと思われた、巨大カマキリ・玉砕の音だった・・・・・・・。

 

_______________________________

 

「・・・・・・・・な〜んだよ、結局、シャアラに助けられたってことかぁ〜?」

「まぁ、そういうことになるよね。」

 

利き腕である右腕を負傷してしまったので、手当てするために、まずは、西の海岸にあるテントに戻ろうとしたら、その付近を調べていたハワードとメノリに偶然出くわした。

丁度、その時、それぞれ持っていた通信機に、タコから連絡が入り、戻ってくるように言われたのだ。

 

多分、何か起こったのだと思うけど、タコは完全にパニックになっていて、「とにかく大変なので、すぐに戻ってくださいぃ!!」とだけ言い残して、一方的に通信を切ってしまうし、シャアラは果敢に巨大カマキリを倒したというのに、時間差で腰が抜けてしまって、探索を続けるどころではなかったので、メノリとも相談してとりあえず、早急に西の海岸に戻ることにした。

 

腕の傷は、ズキズキ痛むけど、シャアラが持っていた救急キットのおかげで出血は止まっていた。

 

「大変だったんだな。」

 

メノリが青い顔でベルを覗き込む。

ベルは、もう片方の左手で怪我した腕を支えながら、メノリに笑いかけた。

 

「途中までは順調だったんだけど、ね。・・・・南の森は、11年前はわりと穏やかだったから、油断してしまったのかもしれない。まさか、あんな東の森にいるような巨大なヤツがいるなんてね。」

「11年も経てば、引っ越してきたんだろぉ〜?」

 

どうやら、ハワード&メノリ組は、何事もなかったらしく、(事件的には。2人の仲には事件はあったのかもしれない)のんびりと答えたハワードは危機感が全くない。

対照的にメノリは、歩きながらも、顎に手を当てて、何か考え込んでいるようだった。

 

「どうかしたのかい?メノリ。」

「・・・・・ああ。妙だな、と思ってな。確かに、この島に生息する動物は大きいが、桁違いの大きさのものは、東の森に限局していただろう?あの森は、木々や植物も大きいから、動物達も自分達を隠してくれるのは、そこだけだと理解しているはずだからこそ、出てこないのだと思っていたが。・・・・・・・なぜ、南の森にいた?」

そ〜んなことは、巨大カマキリに聞けよな〜とぼやいてるハワードには答えずに。

「確かに、パグゥのような例もあるがな。だが、お前達の遭遇した巨大カマキリは飛べるんだろう?」

「そうだったみたいだけど。」

「わざわざ、己の巨体が目立つ他の森へ、なんて・・・・・・」

「追い出されたんじゃないのかぁ〜?」

いつもなら、無視するはずのハワードの言葉に、メノリが反応した。

「ハワード!!」

「わあぁ!!・・・・・なんだよ、ビックリするなぁ〜?」

「今、何て言った!?」

「はぁ!?」

「今、何て言ったか、と聞いてるんだ!!」

 

突然のケンカ腰なメノリに、ベルもシャアラもキョトンとして見つめる。

ハワードも、思いっきり腰がひけていて。・・・・・・・ケンカしてたわけでもないのに、負け腰である。

 

「な・・・・何だよ!?巨大カマキリは、そうやって暴れるから、東の森の他の動物達に追い出されたんじゃないのか〜って言っただけだろぉ!?」

「追い出された・・・・・・!」

「それが、どうしたってんだぁ〜?」

 

情けない表情のハワードには、見向きもせずに、もう一度腕を組んで考えると、メノリはベルを振り返った。

 

「ベル!そうなのかもしれないぞ!追い出されたんだ!」

「え?どういうことだい?」

「ドローン群だ!動物達は敏感だ。あんな機械の大群がやってきたら、普通は逃げ出すだろう!?」

「・・・・・そうか!もしかしたら!!」

目を見開いて叫んだベルの横で、シャアラも納得したように手を叩いたが、その後ろで、ハワードが一人、「え?何?え?何?」とオロオロしているが。

 

「「ドローンは、『東の森』にいる!!」」

 

メノリと同時に叫んで、改めて顔を見合わせた。

 

「ベル、もしかしたら、タコの言ってた緊急事態というのは・・・・!」

「うん!東の森に行ってる、カオルとルナに何かあったのかもしれない!・・・・・・連絡を取ってみよう!」

 

レシーバーを装着して、慌てて、カオルとルナに呼び掛けてみたが。

 

・・・・・・・思ったとおり、返答は全くなくて。

 

丁度、その時、ルナ達がドローン群に遭遇して戦闘中だなんてことは。

 

 

もちろん、思いもしなかった。

 

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・・・・・・・・大丈夫、かしら・・・・・・・・カオル。

 

崖崩れにあって、カオル&チャコとはぐれてしまってから、カオルに言われた通り、みんなの家のあるフェアリーレイクに向かって、パグゥの背に揺られていた。

 

ルナと一緒に歩いていた時も、いまいち調子は良くなさそうだったが、離れると余計心配になる。

本人も、それはよくわかっているようだったから、薬は持ってるはずだし、今は、優秀なドクターでもあるチャコも一緒だ。

 

・・・・・・・・・それでも、なんとなく不安になって。

 

いけない、いけない!!

こんな負の感情が、彼にも悪影響を与える、ってラド博士が言ってたっけ。

私は、いつでも、笑っていなくちゃ!!

 

「・・・・・・おっかしいなぁ〜?」

「どうかしたの?シンゴ。」

 

さっきから、通信機と格闘しているシンゴの背に声を掛ける。

このアクシデントは、タコからみんなに伝わっているとは思うが、一応、直接知らせておいた方がいいと判断したシンゴが、それぞれに呼び掛けていたのだが。

どうにも、反応が悪いようだ。

 

「接触不良かと思ったんだ。・・・・・でも、開けてみても、故障してるような感じはないし・・・・・。時々ノイズは聞こえるから、やっぱり違うのかな?」

「壊れたんじゃないのなら、・・・・・・電波が悪いとか?」

「この通信機は、この島に元々設置されてる警備用ドローンのアンテナを利用してるんだ。もしかしたら、一番近くで中継してる、ドローンのアンテナがいかれてるのかもね。・・・・・でも、困ったなぁ。みんなには、危険だから、みんなの家には集まらないで、西の海岸に戻って欲しかったんだけど・・・・・」

「カオルがきっと知らせてくれてるわ。心配ないわよ。」

 

ルナが明るく言うと、シンゴもやっと笑った。

 

「うん・・・・・そうだね!」

 

通信機は、2人1組に一つ渡されていて、所持しているのは、カオル、シンゴ、ベル、メノリの4人だ。

はぐれてしまってペアはバラバラになってしまったが、とりあえず、通信はできる・・・・・はずなのに。

 

「きっと、カオルも僕らと連絡が付かないこと、気付いてると思うんだ。丁度、集合時間あたりにみんなの家に着くはずだから、もし誰も来なかったら、連絡は行き渡ってることになるよ。そしたら、すぐに西の海岸に向かおう!」

「そうね。」

 

シンゴと2人で、力強く頷いた時、応援するように、パグゥが一声鳴いた。

顔を見合わせて、笑う。

もう少しでフェアリーレイクが見える。

陽は、真っ直ぐ頭上から燦々と焼けるように照り付けてきていた。

 

「・・・・・・ねぇ、ルナは、クーデターの首謀者は、いったい誰なんだと思う?」

 

眩しい陽の光を遮りながら、ふいに、シンゴがそう言葉を投げてきて、はっとする。

 

「え・・・・・・・・・」

「カオルは何も言ってくれないんだよね?・・・・・・でも、言わないってことは、きっと僕らも知ってる人物なんだ。ルナだって、『もしかして・・・』って思う人、いるんじゃない?」

「う・・・・・ん・・・・・・」

俯き加減に、曖昧に答える。

 

もちろん。・・・・・・・考えたことがないわけでは、ない。

 

「でも・・・・考え出したら、キリがないでしょ?証拠はないし・・・・・・」

「だけど、相手が行動に出てくるのを待つには、時間も余裕もない、よ!例えば。・・・・・・・誰だと思う?」

「・・・・・・・・・・・。」

 

単純に。

カオルの態度を見ていると、実は、わかりやすい。

彼は、天性の勘が働くのか、特に何をされたわけでなくても、無意識に警戒している場合がある。

その人物、とは。

 

「本当は・・・・・カオルの言う通り、敵なのか、味方なのか、私にもはっきりわからない、の。だけど・・・・・」

 

・・・・・・彼は、絶妙のタイミングを計って、姿を現す。

謎の言葉を残し、何かを暗示して。

 

「・・・・・・いつも、気が付いたら、姿を消してしまっている。それが、どうしても、理解できないの。」

「あ!!・・・・・・あの歴史学者の・・・・・・・ラド博士!?」

 

ナノマシンの研究もしているという、初老の紳士。

しかし、あの金の瞳は、鋭い光で、私達を見据えてくる、から。

時々、怖いのも・・・・・・・・事実。

・・・・・・・・・でも。

 

「でも、あの人は、いつも、私が知りたいことを教えてくれるわ。カオルが助かったのだって、あの人が助言してくれたからだし・・・・・・。カオルは、何だか、警戒してるみたいだけど・・・・・・・」

 

誰かを、疑ったり、責めたりするのは好きじゃない。

だって。・・・・・・・・・・こんなに嫌な気分になるんだもの。

 

更に俯いてしまったルナを見て、シンゴもやや困惑したような表情で見ていたが。

やがて、顎に指を添えると、空を睨んで言った。

 

「・・・・・・・・・・もしかして、僕らは、発想の転換が必要なのかも、ね。」

「え?」

「誰が怪しい、とか、誰かが、警戒してる、とかじゃなくてさ。・・・・・・・もっと単純なのかもしれないよ?だって、そうだろ?クーデターというのは、政権交代の為の戦争なんだ。」

「ええ・・・・・・」

「なら、今、ロハス王や後継者のアダムがいなくなったとして。・・・・・・・一番、得するのは、誰か、って考えればいいんじゃない?」

「・・・・・・・・っ!!」

 

この星の王は、代々、王族の世襲制である。

しかし、後継者に恵まれなかった場合、現王の指名によっても次期王は決定できる、ということをオーディアから聞いた。

現王である、ロハス王とマデリーン王妃には子供はいない。

よって、身寄りのないアダムを引き取った時点で、ロハス王は次期王をアダムに託す、と公言はしている。

 

「でも、アダムは、まだ、正式な継承式はやってない、って言ってたよね。」

「ええ。・・・・・正式なものは、アダムが成人してからですって。でも、ロハス王が、次期王をアダムに、と望んでいることは、誰もが知っているわ。それを疎んじる人は、きっと、アダムを・・・・・!」

 

もし、今、ロハス王や王妃、アダムという存在がいなくなったら。

次期王位継承権は消えて。

 

「・・・・・権力が分散されるよね。今現在、王が不在でも、発言権が最大にあるのは・・・・・・。」

 

それは、すぐに思いつく。

・・・・・・いつも、ロハス王の傍に、ピタリ、と影のように寄り添う人物。

紫の肌の、逞しい身体の持ち主。

 

「サレハ宰相・・・・・・・・・!?」

「うん・・・・・・・!!盲点だったよ。」

「でもっ・・・・・!!彼は、とても控えめで真面目な人だわ!そんなっ・・・・・!」

「ルナ、人なんか、見かけによらないよ。・・・・・それに、彼なら、全て納得がいくよね。王宮内の動きも、僕らの動きも・・・・・・」

「・・・・・・・・・・!」

 

急に視界が開けて、刺す様な眩しい光が2人を照らす。

フェアリーレイク!!

懐かしむように、パグゥが高らかに鳴いた。

 

 

 

その時。

 

 

 

・・・・・・・・空気を震わせるような、聞き慣れない機械音。

・・・・・・・・一瞬、黙り込んで、息を呑む。

・・・・・・・・シンゴと2人で、空を仰ぐ。

・・・・・・・・静寂。

 

一斉に、鳥達が飛び立った!!

 

(降りろ!!)

 

!?

 

何の前触れもなく、頭の中に響いた声に、ルナは身体を震わせる。

目を見開いたまま、硬直したルナを見て、シンゴが声を上げた。

 

「どうしたの!?ルナ!!」

(・・・・・・・その動物から、降りろ!!)

 

シンゴの声に重なるように、さっきよりも強い声が飛んできた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰!?

 

その声は、コンピューターで合成したかのような、無機的な声であった。

当然、耳にしたこともない。

知らない声、のはずなのに。

 

・・・・・・・身体の震えが止まらない。

 

『・・・・・・・・あなたは誰!?』

(その動物から、降りろ!!)

『どうして、姿を見せないの!?』

(言う通りにしろ!!)

『ドローンを操っているのは、あなた!?』

(我は、お前達を見ている!!いつでも狙うことができる!!)

 

「・・・・・・・っ!アダムを捕らえているのは、あなたなの!?」

「ルナ!?」

 

思わず、声に出して叫んでしまったところで、シンゴが驚いて目をむいた。

 

「アダムを返してっ・・・・・・・・!!」

 

感情のまま、叫んだ。

その瞬間、前方の、生い茂る森の木々達のどこからか、白い光線が真っ直ぐに飛んできて。

パグゥの上にいる二人の頭上を越えて、背後の一本の木に当たる。

振り返った瞬間。・・・・・・・息を呑んだ。

 

じゅわじゅわと、気分の悪くなるような音を立てて、木が溶け出したのだ。

そして、一筋の煙を立てると。

・・・・・・・消えた。

 

「・・・・・・・うわぁ!!フェーザーガンだ!!」

 

シンゴが震え上がって、叫んだ。

ルナも硬直したまま。・・・・・・・消えてしまった、立派な大木のあった場所から目を離せず。

・・・・・・・・震える。

 

そして、同時に、再び『声』が飛んだ。

 

(・・・・・・・・言われた通りにしろ!!その動物から降りて、真っ直ぐに歩け!!)

「シ、シンゴ!!降りて!!・・・・・・・・早く!!」

「え、えぇ!?」

「私の言う通りにして!!・・・・・・・降りて歩くのよ!そのまま!!」

 

訳がわからぬまま、慌てて、パグゥの背から滑り降りたシンゴに続いて、ルナも軽やかに地面に着地すると、シンゴの背を押した。

それから、パグゥの鼻を軽く撫でて、囁く。

 

「いい子、ね。」

 

甘えたような声を上げるパグゥに微笑み掛けると。

 

「・・・・・・・・このまま、西の海岸の・・・・みんなのところへ!パグゥ!!」

 

思い切り、パグゥの身体を叩いた。

驚いたように、大声で『パグゥ〜〜〜〜〜!!』と鳴いて、一目散に走り出す。

ルナはその背を、祈るように見つめる。

 

 

お願いね!パグゥ。

 

・・・・・・・みんなの元に、届きますよう、に。

 

 

みんな!!・・・・・・・・・・・・・気付いて!!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続く。

2007.3.17

 


 

 eriy

シャアラ視点にすると、無意識にメルヘンちっくにしてしまう・・・・・。でも、彼女に合っててステキ♪
この話は、丁度、WEB拍手・お礼文に通じている感じですね。シャアラのベルへの素直な気持ちと、そろそろ完全にルナへの気持ちに整理を付けたらしいベルの(遅すぎだよね・・・)微笑ましいお話。ホントは、カオルナ・ベルシャア、ときて、この後、ハワメノのエピソードも書こうと思ったのですが、話が先に進まなくなりそうで、ヤメました(笑)おかげでせっかくの2人っきりのハイキング(おっと違ったアダム探索)なのに、全く何も起こらずに済まされてしまったハワメノ・・・・ごめんね〜

さてさて、とうとう姿を現すか!?クーデター・首謀者!!ルナとシンゴは推理しあってましたが、果たして誰なんでしょう?

この先の話をピッタリ予測できた方には、ご褒美贈呈〜!!・・・・・なんちゃって。いえ、皆さんの予測をお待ちシテオリマス。

2007.6.30

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